拙著、発売『読むだけで人づきあいが上手くなるー 「気まずさ」が消える心の絶対法則』
拙著
本日9月5日,発売です。
ブラリ立ち寄った書店さまでは平
手にとってくれる人がいると嬉し
みなさん、サンマーク出版さまの
どうぞお手に取ってみてやってく
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心理学研究の再現率はなぜ低い?誤差変数というステルス性能の高い「やられ役」
心理学徒にとってはいささか寂しい結果が公表されました。
この結果に関しては、いろいろと思うところがある心理学徒は多いと思います。
この数字だけが独り歩きして世の中から「心理学は信用ならへんでえ」となってゆくのではないか…とちょっと心配しています。
まあ、この数字だけをみるとそう思わざるを得ないところもあるわけですが、「そこまで疑わんでもええやん!」という筆者なりの感想を書いてみました。
まず、筆者は追試研究の重要性を再認識したわけですが、それ以上に「研究とは誤差変数との戦いなり」という問題もあたらめて実感しました。
心理学研究では本当に些細なことでも誤差変数(想定外の結果に影響を与える要因)になりえます。
筆者の経験上、論文には記載されていないが影響しそうなものとしては(あくまでも筆者の印象です。エビデンスはありません…笑)
・実験者が研究参加者を迎え入れるときの表情や雰囲気、
・実験室の雰囲気(明るいか、暗いか、真新しいか、古めかしいか)、
・椅子の固さ、座り心地の良さ
・前後に世の中を騒がしているニュース(たとえば、日本なら311の前後では世の中のマインドが大きく違う)
・質問紙の項目順序(これだけで結果が変わることも…あなどれない!)、
・質問紙の紙質(真新しくてきれいな紙質だと丁寧に回答しなきゃ…という気になる人も)、
・質問紙と一緒にチョコレートを配ったかどうか(回収率が激変!!)
・ソーシャルスキルフルに丁寧にお願いした場合と機械的にお願いした場合には欠損値の量が違うような印象が…
・調査説明者がはつらつとしているか、好感が持てるか…。
・研究者が気づいていない、または合理的に違いを説明しにくい些細な属性の違い…たとえば、学生を対象にした調査研究なら、中だるみした学期の中期は比較的熱心または勤勉な学生が回答者(出席)に多いが、緊張感のある初期・末期は不真面目な学生も比較的よく出席している。果たして回答者の属性は同じと言えるのか否か?…。
などなど、誤差変数と疑惑がありそうなものを言い出せばきりがありません。
こいつらは、特撮ヒーローでいえばやられ役の戦闘員並みにごちゃごちゃ邪魔してくるわけです。
たちの悪いことにステルス性能が高かったりもします。研究者は不意打ちを食うわけです。
また、検証実験チームを疑うわけではありませんが、「絶対に再現するぞ!」という意気込みがあったかなかったかも実験者効果として影響したかもしれない。
などなど、疑い出せばいくらでも出てきますね。
そうです。これが誤差変数なのです。
人は本当に複雑で繊細な情報の収集・処理システムなので、わずかな違いにも敏感に反応するんですね。
でまた、心理学研究の多くは検証手続きに推測統計的な処理を用いるので、チャンスレベル(偶然、統計的有意になった、または有意にならなかった)という問題も抱えています。
偶然有意になった研究がどの程度公表されているのかわかりませんが、こういう研究は検証すればするほど「違うよね!」と確認されていくわけです。
この問題は追試研究を盛んにすることで解決できるので、対策があるわけですが、誤差変数の統制は研究者のセンスや細かい配慮にも依存しているわけです。
というように、心理学研究がそもそもが砂漠で砂金を探すようなミクロの攻防戦をやっているわけなので、細かい誤差変数のことは研究論文には書ききれませんし、研究者も知覚できていない場合もあります。
という状況を考えると、検証チームが全力で再現に取り組んだという前提の下でも、誰も気づいていない誤差変数がごちゃごちゃ邪魔していた中ではそう悪くない再現率だったのかもしれません。
このへん、研究法に詳しい先生方、いかがでしょうか。
オリジナルと同じ研究者が同じ環境で再現事件をすると再現された…という場合もあるかもしれませんし。
なので、この数字だけが独り歩きして安易に「心理学は信用ならへんでえ」などとなることだけは避けていただきたい。
心理学研究が信用できるか否かは一心理学徒である筆者が語るべきではないと思いますが、一般の皆さんには、このような誤差変数との戦いの中で研究者は真実を求めて戦っているということをお知りおきいただければ嬉しいです。
心理学研究を信じるか信じないかはあなた次第です!…とはならないように、私もがんばります!!
臨床心理士の未来ー心理職の資格を、心理の職域を育ててください
ちょっと古いyahoo知恵袋コンテンツですが、友人の佐藤理子さんがfacebookでシェアしてくれました。古くて、新しい問題です。
このコンテンツに刺激されてfacebookで友人心理職向けに書いた記事ですが、少しでも問題提起になればと思い転載します。
「俺たち医者は毛細血管から末端神経まで頭に叩き込んで仕事してんだ。お前ら心理屋は心の何を知って心理屋を名乗ってるんだ?」
私が最初にお世話になった池袋のクリニックで院長にこう言われました。
その院長は東大心理学修士取得後に慶大医学部に入りなおした元大学助教授です。
心理学を知っているだけに、重みのある言葉です。
当時の日本で流行っていたPsychodynamics、または世界で台頭しつつあったSocial Cognitive psychology を武器に反論しようと思いましたがやめました。
笑われる…と直感的に思ったからです。
医学にはど素人ですが、医学を実学に育てようとしてきた多くの医学者の千年単位の積み重ねを素人なりに知っているからです。
心理学も、臨床心理学も、歴史は浅いですが人の幸せをお手伝いする実績はあげています。そして、全国の心理職は国民の幸せのために日々全力になっています。
ですが、医学の積み重ねに比べれば歴史が浅いことは事実です。次元が違い過ぎて反論できないことは、低能な私でも理解できました。
その日から「心の仕組みを知っています。」とその院長に言い返せる日が来るように全力で心理臨床と心理学研究をやっています。
もちろん、私が生きている間はそんな日が来ないことは分かっています。
ですが、心理屋なのですから心の仕組みを知るべきです。
知る努力をするべきです。
誰かの不確かな思想に頼るのではなく、「医師が毛細血管から末端神経まで知っている」に匹敵する確実なレベルで知ることを求めるべきです。
これを求めるのは少数派のようですが、私は少数派として活動しています。
新しいことをすると誤解を受けます。敵も増えます。
ですが、社会的には海千山千の心理屋が信用と信頼を応えるには、細部まで努力を重ねなければなりません。
そう、臨床心理士資格も、次に来るかもしれない資格も、有資格者一人一人が育てるものなのです。
資格に食わせてほしい若手の声を聴くと残念です。
古来、農耕民族である日本人は生活の糧を自分で育てて来ました。
育てるのは嫌だ、収穫だけいただきたい…。
全力で生き抜いて私たちに命をつないでくれたご先祖は、こんな声を聴いたら嘆くのではないでしょうか。
資格に甘えたい方は、どうぞ心理職を卑下して他の仕事に就いてください。
私は法律で守られた半独占業務がある資格をおススメしています。
私は人生を心理学に投資しました。
私の夢は、数世代後には心理臨床サービスがリスペクトされる時代が来ることです。
夢がかなっても、私自身には投資のリターンがないことは覚悟しています。
ですが、心理の業界が私の大きな家族です。
血縁の小さな家族には申し訳ない限りですが、大きな家族が大きく育つことを夢見ながら逝きたいです。
そう信じられるくらいの仕事は、生きている間にしたいと思います。
雑誌、月刊サイゾー9月号 「賢人?」として「マツコ・デラックス解体珍書」で解説しました。
久々のブログ更新になりましたが、みなさま暑い夏もひと段落してきたかと思います。
その間、私はyahooニュースの解説記事をたくさん書きました。
ご依頼いただけるのは光栄なので、できる限りお受けするようにしています。
さて、突然のお知らせですが、雑誌・月刊サイゾーの特集「マツコ・デラックス解体珍書」で「賢人(?)」としてマツコ人気を心理学と社会学から解説しました。
下はkindleで無料公開されている目次をキャプチャーしたものです。70ページからの「株価とマツコ」のテーマで解説しています。
私と気鋭の投資アドバイザーとのコラボ解説になっています。心理学・社会学から分析したマツコ人気と投資家の視点か考察したマツコ人気の結論が同じ…という点が個人的には面白かったです。
以前から思っていますが、心理学と社会学・経済学を使いこなせれば最強の世渡り術になるのではないかと思いますが、その可能性をさらに実感した次第です。
ちなみにこの企画はマツコ・デラックスの持つ母性と父性を解説したmocosukuさまの次の記事がきっかけになりました。
mocosukuさま、サイゾー編集部岩崎さま、同じくライターの古澤さま、ご縁をいただきましたことに深く感謝いたします。
ちなみにサイゾー9月号の表紙(kindle無料公開のキャプチャー)はこちらです。私も買いました。
本当はマツコを通して10年後、20年後の社会を読み解くこともできるのですが、その話はまた別のエントリーでご紹介させてください。
みなさん、月刊サイゾー9月号、どうぞご覧ください!!
いいカウンセラーの見分け方
「いい精神科医を紹介して下さい」
「いいカウンセラーを紹介して下さい」
大学で臨床心理学の教員をやっていると,よく頼まれることの一つです。
講演や授業,または著書で心の病理や健康を語っていると,本当にお困りの方は私自身が力になってくれる…と期待してくださいますよね。
ありがたいことですし,私自身もご期待に応えたい気持ちは満載です。
ですが,立場的な制約もあって,直接的にご支援することは難しいことがあります。
まず,医師ではないので診断や処方はできません。法的な縛りもあって,私たち臨床心理士には精神科医の代わりはできないのです。
また,セラピスト・カウンセラーとして出会っていないので,セラピスト・カウンセラーをやってしまうと2重関係になって十分に機能できないこともあります。
(ただし,2重関係には例外もあります。これは別の機会にご紹介します。)
ただ,本当にお困りの方は,やはり支援が必要です。
その中で,「誰か紹介して下さい。」というご希望になるのです。
基本的に,精神科医もカウンセラーも相性が重要なので,どのような方が合うのかよくわからない間はご紹介は控えることにしています。
その代わり,あなたにとって「いい精神科医,または,カウンセラー」を見分ける方法をお知らせして,良い方を探すお手伝いをさせてもらいます。
見分ける方法のポイントは一つです。
あなたに一生懸命になってくれるかどうかです。
もっというと,あなたが必要としていることを,あなたの立場に立って,全力で理解してくれるかどうかです。
「なんだ,あたり前じゃないか」
と言われそうですが,当たり前のことを当たり前にやるのが意外と難しいのが心を扱う仕事なんです。
たとえば,あなたが親類との人間関係に悩んでいるとします。そして,あなたは子供の頃からその親類をいい人だと信じて,それなりに楽しい思い出も積み重ねてきました。その人との関係に時間も,労力も,交際費も費やしました。
しかし,その親類がモラルハザードと思えるようなことをしています。客観的に見たら離れたほうがいい状況です。
いいカウンセラーならどう対応するでしょうか。
「早く離れないと,もっと大変なことになりますよ」
と助言をするのでしょうか。
いいえ,違います。
いいカウンセラーは,親戚に悩まされる困惑と離れがたい気持ちの葛藤に目を向けます。そして,あなたの葛藤をそっと救い上げてくれます。
第3者から見たら「離れるが吉」であっても,当事者にとってはシンプルにそうは思えません。これまで費やした人生も,子ども時代の思い出もダメにしたくないので,苦しんでいるのです。
その苦しみを無視して「離れなさい」というカウンセラーは良いカウンセラーではありません。
あなたの立場なら何が苦しいのか…そっと理解して,その苦しみをともに分かち合ってくれるのがいいカウンセラーです。
お困りのあなた,支援を必要としているあなた,あなたがそういうカウンセラーに出会えることを心から願っています。
5-httplrSS型と負の強化:マクドナルドの業績不振に学ぶ,日本人の不安遺伝子とビジネスモデル
yahooニュースさまに以下の記事を執筆させてもらいました。
要約すると、日本人の多くは不安遺伝子を持っているので、「食の安全」を積極的に売らない経営戦略は今の日本には合わない…というものです。
まるで、この記事を裏付けるかのように、日本の若者がマクドナルドを避ける傾向が著しくなったことを示すデータも報道されました。
yahooニュースでは詳しく書きませんでしたが,ここでは不安遺伝子の詳細をご紹介しましょう。
5-httplr遺伝子というものがあります。この遺伝子はセロトニンという物質の代謝に影響しています。セロトニンの代謝は私たちの感情に影響しています。詳しく書くとややこしいですが,まあ,セロトニンが豊富だと感情はポジティブに,乏しいとネガティブになると思ってもらえればOKです。
そして,5-httpr遺伝子はLL型,LS型,SS型という3つの多型があります。
より正確にはL遺伝子にさらに多型があるので,20以上の多型になるわけですが,まあ,概ね3つと考えていただければOKです。
日本人の6割から7割はSS型を持つわけですが,SS型はセロトニンが乏しくなりやすいのです。
つまり,日本人の多くは不安になりやすく,不安を避ける事が行動原理になるのです。
不安が小さくなる行いを繰り返すようになることを心理学では「負の強化」と呼びます。
マクドナルドは「食の安全」を積極的に売ろうとしないので,いつまでも不安が払拭されません。異物混入などへの対応も,一部では「開き直り」とも揶揄されるような弁明では,「この人達が提供するものは安全だ!」と思わせてくれません。
日本人の多くに「マクドナルド=食の不安」というイメージが着いてしまったので,「マクドナルドを避ける=不安を避ける=安心」という負の強化が生じているように思われます。
商売をするなら,消費者を理解することは基本中の基本です。
マクドナルドのビジネスモデルは確かに一時代を築きました。
熱心なファンも獲得しました。
しかし,時代は変わりました。
テレビでもwebでも,過去のビジネスモデルに基づいたマクドナルドの広告を見るたびに虚しくなります。
もう終わったビジネスモデルに固執するのではなく,消費者を見ていれば再建も出来たはずなのに…と残念に思います。
瞬説!アドラー心理学2:トンデモ新入社員とのウマイつきあい方
思想家アドラーの唱えた人生哲学がアドラー心理学です。科学者ではないアドラーの思想は部分的には科学的な間違いもあります。
ですが、成功する秘訣に満ちた、まさに成功者の哲学ともいえるものです。特に日本の「お互い様」「おかげさま」を表した「共同体感覚」は上司と部下の人間関係を考える手がかりにも使われています。
ところで、各企業さまはでは新入社員を迎え入れたことでしょう。
厳密な選別を繰り返て採用した新卒のみなさんへの期待は察して余りあります。ですが、期待通りにいかないのが人というもの…「予想外」の言動に驚くことはないでしょうか。
よく聞くのが本人たちが敬語のつもりで使っている「タメ語まがい」の問題です。指示を受けた時の「了解です」、先輩上司への「お疲れ様です」、「はい!」という場での「うん」…。
これらは言葉だけの問題ではなく、
「敬意があるのか!」
と怒りたくなる方も少なくないようです。
この他にも、仕事へのやる気、責任感…学生気分が抜けているのかどうか疑わしくなって説教の一つもしたくなる方が多いようです。
アドラーが生きていたら、このように悩む上司や先輩のみなさんにどのように助言したでしょうか。
今日は一瞬で解説する名づけて瞬説で、「トンデモ新入社員」の「予想外」との向き合い方を考えてみましょう。
ポイントは「お互い様の意識」→「自分が変わる勇気」→「嫌われる勇気」のプロセスを繰り返すことです。
まずはは「お互い様」の意識を
さて、誰でも最初は新人時代がありました。あなたも、私も、あの人も、みんな最初は新人でした。右も左も分からない…。
新人の最大の問題は、
「何ができていないのかわからない」
「できていないことに気づけない」
ではないでしょうか。
「できていない」ことはストレートに教えたくなるものなのですが、ここでお互い様の発想をもちましょう。
新人にはベテランや経験者の視点を持つことはできませんが、ベテランも新人の視点を持てないものです。新人に会社がどう見えているか、あなた自身が新人にはどう見えているか、100%理解できているといえるでしょうか。
立場の違いだけでなく、育ってきた時代も違う、背景も違う…お互いにわからない。あなたにも新人がわからないのですから,新人にも会社のこと,仕事のことがわからなくて当然なのです。ここで腹を立ててはいけません。
次に自分が変わる勇気を
「新人を見ているともどかしい…ストレートにガツンと教えたい!!」
と思うこともあるでしょう。
ですが,ここで説教をしてしまうと,あなたが伝えたいことは伝わらないし,期待と違う結果が出るだけです。ここは「お互い様」の意識で、新人のことを「学ぶ」ように務めましょう。
「学ぶべきは新人だろう!!」と言いたくなるかもしれません。確かにそういう文化の業界や企業もあるでしょうし,それも大事なことです。
ですが、人は自分を大事にする人を大事にするもの。自分を「知ろう」としてくれる人や会社は大事にしようとしてくれるはずです。そこから新人の「学ぶ意欲」を育てるのも試す価値はあるでしょう。
何かを学ぶ勇気も「自分が変わる勇気」なのです。
最後に嫌われる勇気を
あなた自身が「自分が変わる勇気」を持って新人のことを知ろうと務めて大事にしてあげたのに,新人はそれに甘えるばかり…。そんなお悩みもよく耳にします。
ここで大事なことは「嫌われる勇気」です。この世は「お互い様」で成り立っているのですから,あなたが行った努力は,できる範囲内では新人もやるべきなのです。
新人の甘えが目立つときは例えば以下のように伝えてみてはいかがでしょうか。
「自分も十分じゃないけど,あなたに気持よく仕事してもらえるように自分なりに努力はしているつもりなんだ。あなたももう少しこういう努力してもらえると嬉しいんだけど,どうでしょう?」
ここで大事なことは次の言葉を付け足すことです。
「まあ,努力に僕が気づいていないだけかもしれないけど,実際のところどう?」
こうすることで,お互いに何を努力しているのか,または何の努力がたりないのか,相互理解を持つことができるでしょう。
相互理解の中でも「お互い様意識」,「自分が変わる勇気」,「嫌われる勇気」の循環が必要なことは言うまでもありません。
先輩だから,上司だから,という悪い意味での「長幼の序」に縛られずに,お互いに成長できることを目指しましょう。
presented by prof Takashi Sugiyama
よろしければこちらもご覧ください。