残念な夫の子育て心理学-夫を残念に感じる3つの理由

 ちょっと気になるタイトルのドラマですね。

一部では話題を集めているようなので,子育て心理学から考えてみました。


残念な夫。 - フジテレビ

 

実は杉山研究室の博士号第一号,浦和大学専任講師の五味美奈子先生の研究テーマは子育て期の夫婦関係でした。

私も一緒に研究をさせてもらいましたが,子育てはもっと手厚く支援が必要なんだと実感しました。

このドラマが関心を呼ぶきっかけになって子育て支援が政策レベルで進むことを願っています。

そこで、政策の応援も込めて子育て期の妻が夫を残念に思う3つの背景を考えてみたいと思います。

 

1.子どものことは妻に任せるべし…という日本人の大誤解

まず,日本全体の風潮としては子育てにおける母親の負担が先進国の中ではずば抜けて軽視されています。

子育ては母親の役割…,もっと言い換えると「母親が一人でできて当たり前の役割」という認識を持つ男性が圧倒的に多いのが日本なんです。

実はこれ,先進国の常識でも、進化心理学という科学的な知見からみても完全に間違った思い込みです。

子どもを産む・育てるには相当な時間、心理的な負担、コストが伴います。コストを負担するのが夫の仕事…と思う日本人男性が多いのですが、コストを負担するだけでは時間的、心理的な負担には全然追い付きません。

母親として存在している時間は、女性は自分という人格の大半を否定される時間になります。

なぜかというと、まず赤ちゃんは自分が生きることで精一杯ですので、母親を一人の人として、一人の女性として気遣うことはできません。その一方で、母親は人との交流が限られているわけです。人は人の中で自分を確認して、自分を生きている安心感を得ることができますが、母親というだけでその機会が限られてしまうのです。

今ではママ友というシステムも普及していますが、ママ友がストレスの温床になることも多いです。安心で、確実な自己確認の機会は夫との交流なのです。

夫には母親主体の、母親が自分を取り戻すためのコミュニケーションを取る義務があります。

このことの時間も、心理的な負担(自分自身の不平不満や欲求をがまんすること)も喜ばれる夫に必要な役割なのです。

 

2.「妻を助けている」と夫が思うほど、妻は「助けられている」と思っていない。

母親には朗報、夫には全く朗報ではないデータですが、夫が妻のために何かしていると思っていることと、妻がしてもらっていると感じることは、統計学的に無相関、つまり無関係でした。

むしろ、部分的には夫がやっていると思うほど、妻はやってもらっていないと感じてしまうというデータもありました。

実際、ご主人への不満が強い奥様のご主人をカウンセリングすると、「妻が望んでいそうなことはだいたいやっていますねえ」とおっしゃるケースが多いです。

このギャップは、多くの場合でご主人の「オレ様」意識から生まれている印象があります。

「オレ様がこんなことまでやってやってるんだから、素晴らしいだろ!!」という意識がどこかにあって、ちょっとした母親への援助を過剰評価しているんですね。

確かに、全くしていないわけではないんのですが、母親が「ありがたい」と感じるレベルには達していないようです。

「やってあげてる」とご主人が思うほど、奥さん(母親)はやってもらってないと思うようです。

 

3.母親には金より手間と気持ちをかけるべし

一連の調査で、ご主人が母親を助けていると思う行動の一つに「(感謝を込めて)贈り物をする」 が浮上しました。しかし、母親が「助けてもらっている」と思う行為には贈り物は出てきませんでした。

一日の大半を赤ちゃんのために捧げて自分自身を生きている実感も保てない母親には、高価なプレゼントはあまり意味が無いようです。

母親への最高のプレゼントは、ご主人が時間と気持ちをかけること…。

自分が自分という一人の人格として、一人の女性として存在していることを確認できることが何よりのプレゼントなのです。

忙しいご主人はついついプレゼントで気持ちを表そうとしてしまいますね…ご主人に言わせると、「楽」なんだそうです。時間や気持ちをかけることが「苦」なのではなくて、何を持って気持ちを表現したらいいかわからない…それを探すのが大変だからだそうです。

そんなご主人には、何をしたらいいのかこのエントリーを読めば答えが見つかったことと思います。

時間とお気持ちをかけて、奥様(母親)に向き合ってあげてください。お話をニコニコしながら、喜んで聴いてあげてください。

10分でも、20分でも、奥様は喜ぶと思いますよ。

 

最後に、日本の企業家や管理職のみなさん、奥さん(母親)の話を聞く時間+αはお仕事の早退を認めてあげてください。

母親の幸せは赤ちゃんの幸せ、赤ちゃんの幸せは将来の国民の幸せ,国民の幸せは日本の幸せです。

幸せはお金ではないことを私たちはバブル期に学習しました。

人の幸せは周り回って自分に還ってきます。

残念な夫を減らすことで,日本を幸せにしましょう!!

 

Presented by Prof, SUGIYAMA

 

 

 よろしければ,こちらもご覧ください。

 

グズほどなぜか忙しい! (ナガオカ文庫)

グズほどなぜか忙しい! (ナガオカ文庫)